LTVが向上する「バリューセリング」とは。導入のステップや定着させるポイント
2025年06月19日(木)掲載
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市場でのニーズの多様化が進む昨今、従来的な営業手法では安定した利益創出につながらないことが珍しくありません。このような状況の中で、「バリューセリング」と呼ばれる手法が各企業から注目を集めています。
そこで本記事では、バリューセリングの概要を説明した上で、導入のステップや組織に定着させるためのポイントを解説します。自社に新しい営業手法を取り入れたい経営者や管理者の方は、ぜひご覧ください。
■バリューセリングとは
■バリューセリングを実施することで得られる効果
■成功につながるバリューセリングを導入するためのステップ
■バリューセリングを組織に定着させるためのポイント
■適切なステップで導入し社内の体制を整備することが、バリューセリングでの成功につながる
バリューセリングとは
バリューセリングとは、顧客に提供する「価値」を主軸とする営業手法のことです。
商品の機能や価格をアピールして購買を促すのではなく、導入によって解決できる課題や顧客が得られるメリットに基づき商品を提供します。
近年、バリューセリングは顧客獲得を目指す企業にとって重要な手法となりつつあります。顧客ニーズが多様化した現在では、「機能や価格の優位性」だけでは購買意欲を高めることが難しくなっています。
これからの時代に顧客と厚い信頼関係を構築するためには、バリューセリングによって真に求められるメリットを提供することが重要だといえます。
プロダクトセリングとの違い
従来の営業手法であった「プロダクトセリング」とバリューセリングは、「顧客の価値に重点を置くか否か」という点で大きな違いがあります。
プロダクトセリングは、その名称からもわかる通り、商品の機能や特徴、価格などを強調して顧客にアプローチする手法です。
それに対して、先述した通りバリューセリングでは「顧客にとっての価値」を最重視します。つまり、この商品が課題をいかにして解決するのか、あるいはビジネスをどのように加速させるのか、といった点を顧客の視点に立って考えるのです。
バリューセリングを実践する際は、この違いを理解し、機能や価格を押し出したアプローチにならないように注意しなくてはなりません。
バリューセリングを実施することで得られる効果
ここからは、バリューセリングが自社および顧客にもたらす効果について、より詳細に解説します。
価格ではなく価値で選ばれることによる利益率の改善
「顧客の価値」を主軸とするバリューセリングを実施することで、価格競争からの脱却、さらには利益率の改善を図れます。
繰り返しになりますが、バリューセリングでは商品の価格ではなく、顧客が得られるビジネス上の成果に焦点を当てます。これにより価格だけに依存しないアピールが可能となるため、競合商品との価格競争に巻き込まれにくくなるのです。
また、商品価格を余剰に下げる必要もなくなるので、結果として受注単価や利益率の向上も期待できます。
長期的な関係構築によるLTVの向上
LTV(顧客生涯価値)を向上させられる点も、バリューセリングがもたらす効果の一つです。
バリューセリングでは、単発的に商品を売り利益を得ることよりも、顧客のビジネスに継続的に貢献することを重視します。そのため、顧客との信頼関係をより深く築けるようになり、それが結果としてアップセルやクロスセルにつながります。
また、このような関係性を築いた顧客は、長期にわたって取引を継続してくれる可能性が高く、自然とLTVも向上するでしょう。
顧客の意思決定スピードが上がることによるリードタイムの短縮
何らかの成果を顧客に提示する際、バリューセリングでは具体的な数値、例えばROI(投資対効果)の計算結果や業務効率化の予測数値などを提示します。具体的かつ客観的なデータが提示されれば、顧客としても意思決定が下しやすくなるため、結果としてスピーディーな判断が可能となるのです。
顧客の意思決定スピードが速くなれば必然的にリードタイムも短くなるため、自社の利益創出という面でもプラスにはたらきます。
営業活動における生産性の向上
バリューセリングを採用することが、生産性の高い営業活動の実現にもつながります。顧客への価値提供、そして成果を重視するという性質から確度の高いアプローチが可能となり、成約率の向上が見込めるためです。
また、バリューセリングでは長期的な関係の構築を目指して、フォローアップの体制を整備します。そのため、成約後のフォローが容易となり、効率の良い営業活動を実現しやすくなります。
このように、短期的な売上の創出だけではなく、自社の営業活動を全体的にブラッシュアップできる点がバリューセリングの強みです。
成功につながるバリューセリングを導入するためのステップ
実際の営業活動でバリューセリングを導入し、成功を収めるためには、以下のステップに沿うことが重要となります。
徹底的な顧客理解と課題の深掘り
バリューセリングで成功を収めるためには、まず顧客のビジネスモデルや抱えている課題を徹底的に深掘りする必要があります。これらを理解することなしに、顧客が本当に求める価値の提供はかないません。
データの収集やヒアリング、アンケートなどを活用して、潜在的なニーズを洗い出し、経営課題を把握します。さらに、社内での意思決定プロセスも把握できれば、顧客に対する理解度をさらに高められるでしょう。
顧客価値の明確化と共創型の営業
このステップでは、商品の特徴や機能の単なる説明ではなく、顧客視点に立ち、ビジネスでの成果につながる提案を行うことが求められます。顧客が解決したい課題や本当に必要とする価値を明確化し、そこから具体的な提案を検討していきましょう。
また「顧客とともに理想像を描く」というマインドを持つことも、非常に大切です。「顧客とセールスパーソン」という関係ではなく、ともにビジネスを行う「共創」の関係こそが、バリューセリングの成功には重要な要素となります。
クロージングの工夫と信頼関係の構築
クロージングステップの内容が、バリューセリングの成否を左右するといっても過言ではありません。ここで顧客の懸念点を払拭し適切な合意形成を行うことが、その時点での成約、そして長期的な信頼関係の構築につながるのです。
また、商品やサービスの導入後には、関係各所と密に連携し、カスタマーサクセスの実現を目指しましょう。顧客のビジネスを長期的にサポートしLTVを最大化することが、バリューセリングの最終的な目標だといえます。
バリューセリングを組織に定着させるためのポイント
成功を収めるためには、まず自社にバリューセリングを定着させなくてはなりません。以下の4つのポイントに従って、体制や制度の整備を行いましょう。
組織全体にバリューセリングを導入する目的と目標を浸透させる
バリューセリングで成果を出すためには、営業部門が尽力することはもちろん、全社が一丸となって協力体制を敷く必要があります。そのためには、バリューセリングの導入目的と目標を組織全体に明確に伝えることが重要です。
共通の目標、そして各部門の役割を明確化することで、顧客に対して一貫的かつスムーズなアプローチが可能となります。
バリューセリングに適した営業プロセスを設計する
「顧客にとっての価値を具体的に提示する」というバリューセリングの性質上、その顧客に関しての情報収集やニーズに基づいた資料の作成などは、必要不可欠な対応といえます。しかし、既存の営業プロセスではそういった対応が難しい場合もあるため、状況次第でプロセスを再設計し最適化する必要があるでしょう。
組織全体でプロセスの最適化に取り組み、顧客の期待に応えられる提案が可能な体制を構築することが、バリューセリングで成功を収めるためのエッセンスです。
バリューセリングを促進する評価制度やインセンティブ設計を設定する
営業プロセスだけではなく、社内の評価制度やインセンティブ設計などの最適化も必要です。
バリューセリングでは、契約の単価や利益率だけではなく、顧客満足度やLTVなど多種多様な指標でもって成果の有無を判定します。よって、バリューセリングを実施している社員に対する評価制度も、見直す必要があるのです。
またインセンティブ設計も同時に刷新すれば、社員のモチベーションが上がり、バリューセリングによる成約率が向上する可能性もあります。
営業支援ツールを活用し、DXを推進する
バリューセリングに適した営業支援ツールを導入しDXを推進すれば、情報収集や顧客理解がより効率的に行えるようになります。営業支援ツールにもさまざまな種類があるので、バリューセリングに適しているかどうか、また自社が必要とする機能を備えているかなどを入念に比較し、選定しましょう。
また、DXが進めば営業活動の可視化、さらには業務の最適化も実現するため、さらなる生産性の向上も見込めます。
適切なステップで導入し社内の体制を整備することが、バリューセリングでの成功につながる
今回は、バリューセリングを導入する際の理想的なステップ、そして組織に定着させるためのポイントを解説しました。
顧客ニーズが多様化した現代の市場で、新規顧客を獲得し、さらにはLTVを最大化するためには、バリューセリングの導入が重要です。適切なステップで導入した上で、営業プロセスや評価制度を最適化し、バリューセリングを最大限に活用しましょう。
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